『あきそら』 / 糸杉柾宏

たまにはレビューでも書きましょうかね。


今回紹介するのは、糸杉柾宏氏の漫画『あきそら』です。
この漫画について、とあるショップの店員は「帝国・秋田書店から発射された核ミサイル」(※1)と表現しています。
……もう既にマトモじゃなさそうな気配が漂ってますが、気にしないで下さい。
(※1)
恐らく、チャンピオンREDが通称「秋田書店の核実験場」と呼ばれていることに由来すると思われる。ちなみに、「いちご」の方は全般的に更に酷い。

あきそら 1 (チャンピオンREDコミックス)

あきそら 1 (チャンピオンREDコミックス)

どんな漫画?

秋田書店の発行している雑誌「チャンピオンREDいちご」にて連載されている、全年齢対象の漫画です。
内容はと言うと、


お姉ちゃん(アキ)弟(ソラ)が舌を絡め合う濃厚なキスをしたり、
お姉ちゃんが弟のものを手でしごいたり、
お姉ちゃんが弟のものを口に含んだり、
弟とお姉ちゃんが(あんなこと)しちゃったり、(※2)
弟がお姉ちゃんに(そんなこと)しちゃったりする、(※3)
そんな漫画です。
ですが、あくまでこの漫画は全年齢対象です。


上記だけで、全体のおよそ7割弱程度は説明できます。
後は双子成分や百合成分(おんなのこ同士でキスしてみたり)や変態成分(公共の場でほぼ全裸になってみたり)が3〜4割ほど含まれていますが、メインとなる部分については上記の通りです。
ちゃんとしたストーリーはあるのですが、それについては後述。


もう一度言いますが、この漫画は全年齢対象です。


かなり露骨な突っ込み所が存在してますが、気にしないで下さい。

(※2)
奥ゆかしく表現すると「事を致す」とか、そういった感じのあれ。
(※3)
婉曲的に表現すると「注ぎ込む」とか、ド直球の表現じゃねーかという感のあるそれ。

そんなバカな

この漫画を簡潔に表現するなら「全年齢対象の18禁漫画」です。
出版業界の物差しによると「性器の直接的な描写が無いからエロ本じゃないよね!」という事になっているらしいのです。
出版社側がそう判断しているのなら、そういう事なのでしょう。たぶん。
……うーん。良いのだろうか?


ちなみに、知人数人に読ませたところ、以下のような返答が帰ってきました。
>全年齢対象の範囲ってすごく広くなったんですね^^(知人A)
>このマンガ男の子が一番かわいいです。あ、あと、エロいらない。(知人B)
>↑同意。(知人C)
>俺に直球ストライクじゃないか!ちょっとこの漫画買ってくる!(知人D)


1名ほど末期患者が紛れ込んでおりますが、気にしないでください。
今回こればっかだな。

おはなしの概要

さて。
やたらとエロスばかりが強調されていますが(実際、買う人の大半がエロ描写目当てでしょう)、ここでストーリー面に少しだけ目を向けてみます。
先で書いたとおり、この漫画でやる事をやっちゃってる2人は、姉と弟の関係です。
姉を慕っていた弟が、いつの間にか姉に対して(姉弟間のそれを超えた)恋愛感情を抱くようになり、ある日一線を越えてしまいます。
簡単に言うと、近親相姦しちゃってます
他の登場人物も、これまた先で書いたとおり同性が好きだったり露出狂の変態だったりで、誰も彼もがマトモな感覚を持ち合わせていません。
(厳密には、ショタコンという比較的まともな感覚を持った人が一人だけ居ます。が、影が薄いです)
大凡まともだとは言い難い環境の中で展開される、多種多様な恋愛模様……というのが、この漫画の主題となります。


ここで、一つの疑問が出てきます。
この話を描写するのに、果たしてエロは必要なのでしょうか?

エロは必要か、あるいは否か……という名の感想とまとめ

私としては、この『あきそら』については、エロは必要だと考えています。
もし、完全に全年齢で許される表現の範囲(恐らく、ディープキスがギリギリアウトになる位)のみで表現するとなると、
・完全に一線を越えた事による、「後戻りのできない」雰囲気
を描写するのが非常に難しくなります。
そして、この点は、『あきそら』の主題に直接結びつく部分です。


一般的な、ソフトな描写のみでこれを行おうとすると、アキとソラがどこまで愛し合っているのか、を表現するのがほぼ不可能となります。
そして、そのまま(エロのみを省いて)描写すると「んー、ソラ君は何でこんなに悩む必要があるのー?」となるでしょう。
近親相姦について扱うのですから、一般的な仲の良い姉弟である、という程度の受け取られ方をすると非常にまずい訳です。
即ち、この段階において、書き手側と受け手側に致命的なレベルでの認識の齟齬が生じます。
そうなると、読者に読ませるためのお話として成立させるのは非常に難しくなってしまいます。だって伝わってないもん。


ここから、『あきそら』というお話は、「エロがあるから描ける物語」だと言えると思うのです。
エロがあるから、二人の結びつきの深さが分かり、強烈な背徳感を描写し、それを読者に伝えることができるのです。


ただし。
現状ではエロ本の域を脱し切れてないかなー、というのも正直な感想です。
エロシーンとそれに絡んだ退廃的な雰囲気、というものが若干足りなく感じました。
一般に禁忌とされている「近親相姦」というテーマについても、今のところはまださらりと扱っている程度な気がします。
(と言っても、これを重く表現するか否かは作家さん事に相当な差が出ます。作中に挿入されているモノローグを見る限り、糸杉氏はヘビー気味以上のものを入れるつもりはあると思います)
話が進むにつれて、この辺りを表現するのも可能になってくるでしょうから、その前にあれこれ言うのもどうかなー、という気はします。
という訳で、二巻も期待してます。


……一部がどう見ても俺の趣味です。本当にありがとうございました。

おまけ

自分は一週間前に購入したのですが、この本。



第2刷でした。(※発売日は08年の12/19です)


もうやだこの国!

おまけその2

じきに、この記事関連の何かを纏めようかと思います。
早くても春になる頃でしょうけど。